医薬品製造設備の許容残留値の設定について

医薬品製造設備の洗浄後の許容残留性は公的な基準が存在しないため、各社または各製造所毎に適切な理由(Justifications)に基づき設定されます。

一般的に残留許容基準の設定方法は、NOAEL(No Observed Adverse Effect Level:無毒性量)やNOEL(No Observed Effect Level:無作用量)等の毒性学的データに基づき品目毎に個別に設定されます。具体的にはISPE(国際製薬技術協会)が出版しているベースラインガイドRisk MaPP(Risk Based Manufacture of Pharmaceutical Product)を参考にすき、NOAELからADE(Acceptable Daily Exposure:1日曝露許容量) を計算し、残留許容基準値を求めることが推奨されています。

また、開発段階で毒性データが設定されていないもの、あるいは古い製品でNOAELのデータがない場合では、TTC:毒性学的懸念の閾値(Threshold of Toxicological Concern)を利用する事例もあります。TTCはICH-M7で記載されているとおり、一生涯についてその物質に曝露されたとき、10万人の患者で1人について、毒性(遺伝毒性)が発生する毒性学的懸念の閾値であり、0.03μg/kgbw/dayです。標準体重50㎏の場合1.5 µg/dayとなります。

なお、従来一般的に使用されてきた、
①0.1 %基準(次製品の1日最大投与量中への混入量は、前製品の1日最小投与量の0.1 %以下であること)
②10 ppm基準(次製品への混入量は10 ppm以下であること)
③目視確認(目視で残留物が認められないこと)
にて設定する場合は、必ずその根拠となるデータが必要となりますので、適切に理由に基づき設定する必要があります。
なお、参考までに以下のイーライリリー社の論文を活用できる場合もあります。
Fourman,G.L. and Mullen,M.V., Determining Cleaning Validation Acceptance Limits for Pharmaceutical Manufacturing Operations, Pharmaceutical Technology 17(4), 54-60(1993)