EUにおける医薬品原薬登録制度のASMFとCEPの違い
新薬承認申請時には、ICH-M4Qに従い原薬と製剤の品質に関する情報をCTDに記載する必要があります。一方で、原薬に関してはCTDに記載しない方法もいくつかあります。EUにおいては、日本と同じように原薬等登録原簿(マスターファイル/MF)制度と同様のASMF制度、日本にはない薬局方に関連する登録制度があります。今回はEUにおける医薬品承認申請の原薬情報の登録制度・仕組みについて紹介します。
1 ASMF(Active Substance Master File)を利用する方法
ASMF(Active Substance Master File)とは、医薬品の原薬製造業者が機密性を保ちつつ製造プロセスや品質管理に関する詳細な情報を規制当局に提供する文書です。ASMFは、情報の機密性を確保しつつ規制プロセスを効率化し、原薬製造業者と製造販売業者(医薬品承認申請者)との間で情報を独立して管理できる仕組みを提供します。
- 適用:医薬品原薬
- 登録申請:EMA
- 申請者:原薬製造業者
- メリット:
- 情報の機密性の維持: ASMFに登録することで、原薬製造業者は自社の製造プロセスや特許情報を外部に公開せずに済みます。
- 効率的な規制遵守: ASMFを通じて提供される情報は、規制当局と共有され、規制遵守を簡素化します。これにより、同じ原薬を使用する異なる医薬品の重複する提出を避けることができます。
- 製造業者と製剤業者の分離: ASMF制度により、原薬の製造業者と製造販売業者は、情報を共有しながらも独立することができます。これにより、ビジネス上の競争上の利点が維持されます。
- 備考:日本のMF制度と同様に、ASMF自体はそれを利用する医薬品承認申請時/変更申請時に審査されます。この際、製造販売業者側は、ASMFを参照する許可証として ASMF holder(登録保持者)からの Letter of Access 写しを添付する必要があります。
2 CEP(Certificate of Suitability to Monographs of the European Pharmacopeia)を利用する方法
CEP(Certificate of Suitability to Monographs of the European Pharmacopoeia)とは、EP(European Pharmacopoeia)のモノグラフ(規格)に基づいて製造された原薬(有効成分)の品質について認定される文書です。
- 適用:EPまたは各EU加盟国の薬局方に掲載されている成分
- 登録申請:EDQM(European Directorate for the Quality of Medicines & HealthCare)に提出
- 申請者:原薬製造業者
- メリット:
- 規制遵守の合理化:CEPを取得することで、製造業者は当該製品がEPおよび関連規制に適合していることを示すことができます。また各国の規制当局に対する情報提供を合理化できます。
- 医薬品承認審査の省略:CEP が発給されると ASMF の M3.2.S 参照は置き換えること が可能です。CEP に記載された部分は製造販売業者による医薬品承認申請時/変更申請時には審査は不要となります。
- 備考:CEPの申請には製造プロセス、品質管理、分析手法、試験結果などに関する情報が含まれます。