EUにおける医薬品承認審査プロセス

本記事ではEMAの医薬品承認審査の種類やプロセスについて解説します。

欧州における医薬品製造販売承認(MAA)の審査は欧州医薬品庁(EMA)が行います。そしてEMAが管轄している国はEU加盟国だけでなく欧州経済領域 (EEA)も含みます。このEEAにはEU加盟国(2024年3月時点で27か国)と、EUに非加盟であるが欧州自由貿易連合(EFTA)に属するアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーが含まれています。
つまり、EMAはEU加盟国+アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェーの国に対する審査を管轄しています。

またEMAの審査方法は主に以下に示す4種類(CP/DCP/MRP/NP)がありますが、いずれの方法も製造販売承認申請者が選択することが可能です(条件あり)。例えば申請する製品の販売地域等を考慮して中央審査方式ではなく、加盟国別審査方式で申請するケースもあります。具体的な審査方法については以下の通りです。

1 中央審査方式/ Centralised Procedure (CP)

  • 概要: 中央審査方式は、EMAを通じて一つの申請を基に欧州全体で統一的に審査する手順です。
  • 適用範囲: 特に高リスクの医薬品や新規有効成分を含む先進的な治療法に対して使用されます(新規医薬品および生物学的製剤)。
  • プロセス: 申請はEMAに提出され、EMAが専門家委員会を組織し審査を行います。具体的には、ラポーター(Reporter)と呼ばれる審査主担当と、コ・ラポーター(Co-Rapporteur)と呼ばれる、別のEU加盟国から派遣された審査担当が指定されます。コ・ラポーターは国別の視点や意見を加え、ラポーターと共同で評価を行います。当該ラポーターとコ・ラポーターが製薬企業と対話・照会が行われ、最終的にEMA専門家委員会が意見をまとめ、欧州委員会に提出されます。当該委員会はEU加盟国の代表者で構成され、審査結果に基づいて欧州委員会が承認を行います。

2 分散審査方式 / Decentralised Procedure (DCP)

  • 概要: 分散審査方式は、複数の欧州加盟国で医薬品を同時に承認する手順です。
  • 適用範囲: 医薬品が複数の国で販売される場合に使用されます。通常、分散審査は一般的な医薬品やジェネリック医薬品に適用されます。
  • プロセス: 申請は主要な加盟国に提出され、一つの国を主導国(Reference Member State)として選びます。RMSは中央的な役割を果たし、他の参加国(Concerned Member States, CMS)と協力して評価を行います。 RMSとCMSは意見を収束させ、最終的な意見をまとめ、RMSが欧州委員会に提出します。最終的に各国で同時に承認が行われます。

3 相互承認手続 / Mutual Recognition Procedure (MRP)

  • 概要: 相互承認手続は、既に一国で承認を受けた医薬品を他の国で承認する手順です。
  • 適用範囲: 既に一国で承認された医薬品を他の国で販売する場合に使用されます。
  • プロセス: DCPと同様に、製薬企業は RMSを選び、RMSはCMSと連携して審査プロセスを進めます。RMSとCMSは意見を交換し、合意に達するまで協力を続け、最終的な合意に基づいて、RMSは欧州委員会に承認申請の意見を提出します。

4 加盟国別審査 / National Procedure (NP)

  • 概要: 加盟国別審査は、医薬品が特定の国でのみ販売される場合にその国でのみ承認を受ける手順です。
  • 適用範囲: 特定の国でのみ販売される医薬品に対して使用されます。
  • プロセス: 申請は各国の国内規制機関に提出され、各国で独自に審査が行われ、承認が与えられます。