「2023-08-31【課長通知】ICH-Q9:品質リスクマネジメントに関するガイドライン」の通知解説

ICH-Q9(R1)の改訂では、主に以下の点が改訂されています。

(1)「5 リスクマネジメントの方法論」に、「5.1 品質リスクマネジメントの形式性」、「5.2 リスクベースの意思決定」及び「5.3 主観性の管理と最小化」を追加した。
(2)「6 企業及び規制当局の業務への品質リスクマネジメントの統合」に、「6.1品質/製造上の問題から生じる製品の安定供給リスクに対応する上での品質リスクマネジメントの役割」を追加した。
(3)「付属書Ⅱ:品質リスクマネジメントの潜在用途」に、「II.9 サプライチェーン管理の一環としての品質リスクマネジメント」を追加した。
(4)「リスク特定」を「ハザード特定」に変更した。
(5)その他記載整備を行った


上述の改訂箇所の要約▼

「5.1 品質リスクマネジメントの形式性」
品質リスクマネジメントの形式性は、二者択一的な概念ではなく、リスクベースの意思決定等、品質リスクマネジメント活動を進める中では、さまざまな程度の形式性が適用される場合があることを示しています。また、品質リスクマネジメントの厳密さや形式性の程度は、利用できる知識の量を反映すべきであり、また対応する問題の不確実性、重大性、複雑さのレベルに比例すべきであることが述べられています。

「5.2 リスクベースの意思決定」
リスクベースの意思決定は、すべての品質リスクマネジメント活動に付随するものであり、組織の意思決定者に不可欠な基礎を提供することが述べられています。リスクベースの意思決定は、品質リスクマネジメントプロセスにおいて適用される労力・形式性・文書化のレベルを決定することから開始し、意思決定に関連するリスクについての知識と、リスクが受容できるレベルにあるかどうかを考慮するアプローチ又はそのプロセスであることが述べられています。

「5.3 主観性の管理と最小化」
主観性は、品質リスクマネジメントプロセスのあらゆる段階に影響を与え、特にハザード特定及び危害の発生の確率及び重大性の評価に影響を与えることが述べられています。また、リスク低減の評価や、品質リスクマネジメント活動からなされる意思決定の有効性にも影響を与えます。主観性は、リスクの評価方法や、異なる利害関係者がハザード、危害及びリスクをどのように認識しているかが異なることで入ることがあり、これによってバイアスが生じることがあります。主観性を最小化するためには、リスク評価の方法を明確にし、異なる利害関係者の意見を考慮することが必要です。

「6.1品質/製造上の問題から生じる製品の安定供給リスクに対応する上での品質リスクマネジメントの役割」
品質リスクマネジメントは、品質/製造上の問題から生じる製品の安定供給リスクに対応する上で重要な役割を果たします。このプロセスは、製品の品質に関するリスクを評価し、リスクを低減するための戦略を策定することで、製品の安定供給を確保することを目的としています。品質リスクマネジメントは、製品の品質に関する問題を特定し、早期に対処することで、製品の安定供給を維持することができます。

「II.9 サプライチェーン管理の一環としての品質リスクマネジメントプライチェーン管理の一環としての品質リスクマネジメント」

品質/製造の問題に係る製品の安定供給上のリスクに関して、製品ライフサイクルを通してサプライチェーンを管理するには、品質/製造上のハザードに関する最新の知識を維持することや、そのようなリスクへの取り組みの優先順位付けが含まれる。品質/製造のハザードを理解することは、供給の予測可能性を維持するために極めて重要である。リスクが十分に理解され、管理されれば、安定供給についてより高い信頼性を達成できる。
「製造工程の変動と管理できた状態」、「製造施設及び装置」、「供給業者との関係と管理」の観点からのリスクマネジメントが推奨されています。