2025年の薬機法改正のポイント解説(GMP・GQP・品質保証体制の強化と実務への影響のまとめ)
2025年5月に公布された「令和7年法律第37号」により、薬機法が大きく改正されました。今回の改正では、GMP・GQP・製造販売業者の責任体制強化を中心に、品質保証・安全管理・供給安定に関する制度が見直されています。本記事では、製造・品質部門に関わる実務者向けに、改正の要点と実務への影響をわかりやすく整理します。
ガバナンスの強化
① 責任役員の変更命令の導入(法第72条の8)
- 違反行為があった場合、厚生労働大臣が薬事業務に責任を持つ役員の変更を命令可能。
- 対象は製造販売業者の「薬事責任役員」。
- 企業ガバナンス強化の一環として、組織的な責任所在の明確化を図る。
② 製造販売業者による製造所の監督・監査の法定化(法第18条)
- GMP遵守状況の定期確認、記録保存、情報収集が義務化。
- 委託先製造所も対象。GQP体制の実効性向上が目的。
- 実務では、監査頻度や記録様式の標準化が求められる。
③ 品質保証責任者・安全管理責任者の法定化(法第17条第6項)
- GQP/GVP省令から薬機法上の義務へ格上げ。
- 違反時には厚労大臣による「変更命令」も可能。
- 品責・安責の役割と権限を社内規程で明確化する必要あり。
④ 製造業者のGMP基準遵守義務の法定化(法第18条第7項)
- GMP省令に基づく管理が法的拘束力を持つように。
- 違反時の行政処分の根拠が明確化。
- GMP教育訓練の強化と内部監査体制の整備が求められる。
⑤ 再生医療等製品の規格外品の取扱い(法第65条の5)
- 軽微な変更に該当し、厚生労働省令で定める届出を行っていれば、規格外品でも使用可能。
- 「軽微な変更」の範囲は省令で定義予定(例:製造工程の微調整、原材料の変更など)。
- 届出が受理されていない場合は規格外品として扱われ、販売等は禁止。
薬事監視体制の強化
① GMP適合性調査の合理化と監督強化
- リスクベース調査へ移行。調査頻度は5年→3年に短縮。
- 高リスク製造所には頻度を上げて実地調査。
- 調査免除の条件やリスク評価基準の整備が進行中。
② 基準確認証制度の拡大
- 輸出用医薬品にも適用。
- 中等度変更申請ではGMP調査免除可能。
- 国際整合性の向上と手続きの簡素化が目的。
③ 医薬品製造管理者の要件見直し(法第17条第5項)
- 原則薬剤師だが、困難な場合は技術者で代替可能。
- 地域や業態による人材確保の柔軟性を確保。
- 代替技術者の要件は省令で定義予定。
安定供給の強化
① 海外代替品の迅速導入(法第14条等)
- 優先審査制度の導入。
- 外国語表示の特例も認められる。
- 緊急時のアクセス確保策として、医療現場の即応性向上。
② 日本薬局方の規定見直し(法第56条)
- 柔軟な改訂運用。
- 日局不適合品目も個別承認可能。
- 品質確保と供給安定の両立を目指す。
③ 中等度一変申請の導入
- 中リスク変更に対する簡易申請制度。
- 審査期間:原則3ヶ月以内。
- 変更分類の明確化と申請様式の整備が進行中。
④ 年次報告制度の導入
- 軽微変更は年度毎に報告(通知による試行中)。
- 変更管理の効率化と行政負担の軽減を目的。
⑤ 外国製造業者の登録制への変更(法第13条の3)
- 認定制から登録制へ移行。
- 保管のみの製造所も対象。
- 国際整合性と手続きの合理化を図る。
安全対策の充実・効率化
① 感染症定期報告制度の見直し
- 「感染症評価報告」へ名称変更。
- 報告対象がない場合は報告不要に。
- 実務負担の軽減と報告の実効性向上。
② RMP(リスク管理計画)の法定化(法第68条の2)
- GVP省令から薬機法上の義務へ格上げ。
- 指定医薬品に対して計画作成・報告義務。
- RMPの内容と提出様式の標準化が進行中。