医薬品の再審査期間と独占期間について

医薬品の新有効成分に関する再審査期間が設定されると、その期間はまだ追加の審査が必要である医薬品ということになるため、規制当局は当該再審査期間中には同じ有効成分の他社製品を承認しないため、原則として独占的な市場状況を維持できます。この再審査期間は特許延長とは直接関係はないため、医薬品の特許(物質特許・用途特許・製剤特許・製法特許)が切れていたとしても再審査期間中であれば同一有効成分のGE品は上市されないことになります。

この仕組みは日本独自の制度ですが、海外では特定の条件を満たすことで特許を延長するような制度もあります。

医薬品の区分再審査期間
希少疾病医薬品10年
 うち、新投与経路医薬品または新医療用配合剤に該当するもの6年~8年
薬剤疫学的手法を用いて行う必要がある新医薬品10年
新有効成分含有医薬品8年
新医療用配合剤、新投与経路医薬品6年
特定用途医薬品4年~6年
新効能医薬品
 ①先駆的医薬品の場合6年~8年
 ②既存効能が希少疾病医薬品の場合5年10か月
 ③それ以外の場合4年
新用量医薬品4年

なお、上記新有効成分以外にも以下のような場合には、再審査期間を延長できる場合(最長10年)があります。

・承認後、薬剤疫学的手法を用いて評価を行う必要があると認められたもの
・小児開発計画が審査終了までに提出され、承認後遅滞なく小児治験が開始されたもの


欧米(FDA/EMA)の独占期間延長の方法

前述のとおりUSには再審査期間という概念はありませんが、日本と同様に医薬品の特許で独占期間を維持することとなります。当該特許を延長または追加する方法がいくつかあるので以下に記します。

  1. 基本特許期間(Basic Patent Term):
    • 医薬品の基本的な特許期間は、特許の発行日から20年間です。これは、新しい有効成分や新しい製剤に関する基本的な特許に適用されます。
  2. 特許期間延長(Patent Term Extension):
    • 特定の条件を満たす医薬品について、特許期間延長が認められることがあります。これにより、基本特許期間に最大で5年間の延長が可能です。
    • 主に、米国食品医薬品局(FDA)が承認した新薬の中で、新しい有効成分が含まれ、かつ特定の要件を満たす場合に適用されます。
  3. 追加的特許(Additional Patent):
    • 医薬品の新しい用途や新しい形態に関する追加的な特許を取得することも可能です。これにより、同じ有効成分に基づく追加的な独占権が提供されることがあります。
  4. 小児用医薬品の特許延長(Pediatric Exclusivity):
    • 小児に対する臨床試験を行った医薬品に対して、FDAによって最大で6か月の特許延長が認められることがあります。

一方、欧州医薬品庁(EMA)でも、再審査期間という概念はありませんが、日本と同様に医薬品の特許で独占期間を維持することとなります。当該特許を延長または追加する方法がいくつかあるので以下に記します。

  1. 補完的な保護証明書 (SPC) の申請:
    • 欧州では、SPC(Supplementary Protection Certificate)が特許期間延長の一環として使用されます。SPCは、新しい有効成分や新しい治療法に対して特許期間を延長するための手段です。
    • SPCの申請には、製品がEUで最初に承認され、既存の基本特許が有効である必要があります。
  2. 小児適応症の追加情報の提供:
    • 小児に対する臨床試験の結果を提供し、小児適応症に関連する情報を追加することで、小児適応に関する特別な保護を受けることがあります。これはEUでもPediatric Use Marketing Authorization(PUMA)として知られています。
  3. マーケティング認可の拡大:
    • 新しい適応症や患者集団に対する追加のマーケティング認可を取得することで、既存の特許を活用して特許期間を延長することがあります。
  4. 製剤や投与法に関連する特許の取得:
    • 製品の製剤や投与法に関する新しい特許を取得することで、特許期間の延長や競合製品の市場参入を難しくすることができます。

2020年8月31日【課長通知】再審査期間の取扱いについて